日銀の白川総裁が任期を待たずに辞任するという。為替市場は、後任の総裁が金融緩和派になるのを予想してさらに円安に振れ、一時期1ドル94円になった。民主党時代、物価の番人を自認して頑なに日銀の独立性を守ってきた氏も、阿部総裁率いる自民党の圧力に屈し、2%のインフレターゲットを容認した頃から、心は揺れていただろう。日銀法改正も辞さないという自民党の圧力に抗しきれず、しぶしぶの方針転換かとも思うが、日本人は誠に空気に弱い。国を挙げての圧倒的な景気回復期待論に、為すすべもなく屈服された形だ。実際の政策実施を待たずに、市場が思惑とは反して円安株高に振れたのも一つの要因である。そんな中での唐突な辞任発表は、内心はアベノミクスには反対であるという矜持なのであろう。
それにしても、これまであれほど財政規律に厳格でケチな財務省が、補正にしろ次年度予算にしろ、どうしてあのように多額な財政出動を許したのかが疑問であった。ある評論家は、それは次年度の景気を、短期的にしろ上げておかないと、平成15年の消費税アップができなくなるからだと言っていたがさもありなんと思った。いずれにしても円安のおかげで、自動車業界をはじめとした輸出産業は、大いに恩恵を被っている。