念願だった花巻温泉に行ってきた。東北の温泉はいつも格別な印象を持つが、今回はそれ以上に宮沢賢治の故郷という大きなおまけがあった。到着するなり宮沢賢治館、イーハトーブ館と賢治を満喫した。神様は実に不公平である。賢治という天才は37歳という短命ながら膨大な童話、短歌、詩、エッセイを残している。そのどれもが独創的で審美的である。しかも総じて言えることは、その何処の断片を見ても東北の山の匂いを感じることだ。それでいながら田舎的な排他性も偏狭さも感じないのが不思議である。何処までも普遍的な広がりや暖かさを感じるのは私だけだろうか。その広がりはまさに宇宙的でさえある。
上の詩は有名な「雨にも負けず」である。賢治の死後、発見されたとのことだが、経済的にも、才能にもにも恵まれながら、このような朴訥な詩を書いたこと自体、不思議な感じがする。特にデクノボーになりたいとは強烈である。しかし死に臨んで考えたのは、有り余る才能を短い一生で出し尽くして、不器用で愚直に生きようとするもう一人の自分を見い出したのかもしれない。